令和4年度法文学部・人文社会科学研究科入学生の皆さまへ

令和4年4月4日
法文学部長・人文社会科学研究科長
松田 忠大

新入生の皆さん、入学おめでとうございます。法文学部・大学院人文社会科学研究科の教職員を代表して、お祝いを申し上げるとともに、皆様を心より歓迎いたします。
新型コロナウイルス感染症の拡大は未だ収束の兆しをみせず、今年度も本学の入学式は、各学部等の代表者のみが出席して開催されることとなりました。すべての新入生が一堂に会する入学式が挙行されないことをたいへん心苦しく思います。
新型コロナウイルス感染症が拡大しはじめて3年目になります。この間、法文学部・人文社会科学研究科では、教育・研究活動において、学生・教職員がこれに罹患することのないよう、十分な対策をとって参りました。対策の中心は、オンライン会議システムを活用した遠隔授業の実施ですが、鹿児島県内や本学における教育・研究活動以外での感染状況を注視しながら、時期や授業の形態によっては対面授業を実施するという工夫も行い、可能な限り学生が大学に登校する機会も設けました。今年度も、遠隔授業と対面授業を組み合わせて、学生・教職員の健康や安全を守りつつも、教育・研究活動に支障が生じないよう配慮して参ります。また、授業の履修などについて心配なことがあれば、遠慮なく担任教員や学生係に相談してください。

さて、皆さんは、これから法文学部・大学院人文社会科学研究科の学生としての第一歩を踏み出します。学部生の皆さんは、長かった受験勉強から解放され、一息つかれていることと思います。高校での学びとは異なり、大学での学びには「主体性」、「自主性」が求められます。早速、履修する科目を自ら選択して登録する「履修登録」が始まります。高校での学びと異なり、大学では、一定の条件(卒業要件)に従って自由に科目を選択して学ぶことができます。法文学部では、学生は、2つの学科、5つのコースに分かれて所属しますので、基本的には、それぞれのコースが用意した専門分野の科目を中心に履修することになります。しかし、学部での学びでは、学生の皆さんには、自分の専門分野にとどまらず、これに関連する分野、その周辺分野、さらには理系分野に至るまで、幅広い学びを期待します。この複雑な現代社会において、新しい「価値」を創造し、これからの豊かで平和な社会を築いていくためには、自分の専門性を意識しつつも、4年の修学期間に多様な学問に触れ、幅広い教養と正義の感覚を身につけることが重要です。
大学院生は、学部の学生とは異なり、自分が選択したテーマに関する研究活動を行うことが中心になります。「研究」は、先人たちの研究の成果を踏まえ、現代社会の諸課題の解決策や、その解決を導くための新しい考え方を生み出す、いわば創造的な活動とも言えます。単に、講義、フィールドワーク、書物などから知識を得ることとは全く異なります。もちろん、新しい考え方を生み出すには、まずは多くの知識を得る必要があります。その意味では、講義を受講することや、多くの文献を読むことはとても重要なことですが、これに止まらず、調査・探求して得られた知識や事実を活用して、課題に対する自分なりの「答え」を導き出さなければなりません。さらに、社会構造が複雑化し、多様な価値観が渦巻く現代社会においては、一つの課題を解決するのに、伝統的な学問領域の知見だけでは不足することがあります。このような場合、既存の学問分野の垣根を越えたアプローチが必要となります。他の分野や理系の知識が必要になることも珍しくありません。

ところで、皆さんは、鹿児島大学の基本理念をご存知ですか。そこには「進取の気風」、「進取の精神」という文言が使われています。ご存知のように、ここ鹿児島の地は、かつて、明治維新を牽引し、日本の近代化に大きく貢献した多くの優れた人材を輩出しました。鹿児島は、古くから海外に門戸を開いており、未だ鎖国中であった1865年には、当時の薩摩藩が英国に留学生を派遣しています。派遣された留学生は、当時の英国の進んだ学問や技術を修め、帰国後は、明治維新、日本の近代化を牽引しました。この時代、異国における学びを成し遂げるには、多くの困難を乗り越えなければならなかったことでしょう。鹿児島大学が、その基本理念の中核として、「進取の精神」や「進取の気風」という文言を掲げているのは、鹿児島で生まれ育ち、近代日本の礎を築いた先人たちの意志を受け継ぎ、自ら困難な課題に果敢に挑戦し、未来を切り拓くことができる人材を育成しようという決意を示すものです。
今年度、法文学部を中心に、鹿児島の近代に関する教育と研究を推進するためのセンターを設置する予定です。このセンターでは、本学や地域が有する歴史資料や遺跡・遺構などの歴史的遺産を教育研究の対象とし、幕末・明治維新期に活躍した偉人の生き方や思想、当時の社会や文化を研究して、その成果を現代社会の諸課題の解決策に活用するための活動を展開していきます。幕末・明治維新期に活躍した郷土の偉人に学び、平和で豊かなこれからの国際社会を担うべき人材をここ鹿児島の地で育て、世界に羽ばたかせるために、学生がこの活動に参加する仕組みも作りたいと考えています。

鹿児島大学の教育目標には、教養、専門知識、課題解決能力を身につけること、人間性や倫理観を養うことのほかに、「地域における活動に積極的に関わり、社会の発展に貢献できる行動力を養う」こと、「グローバルな視野をもち、国際社会の発展に貢献できる実践的な能力を育む」ことも掲げられています。大学では、教室での学びのほかに、地域や海外を学びの場とした教育活動も用意されています。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、地域への関わりや、海外研修・留学の機会が制限されていますが、最近では、オンラインを活用した地域との交流や海外研修も行われるようになりました。将来、グローバルな視点から国際社会や地域社会の発展に貢献するためには、地域の実情に直接触れることや異文化交流は欠かせません。制限が解除されるまでは、こうした方法での交流や研修を積極的に利用しつつ、状況が許せば、在学中に一度は、留学などの方法により海外で学ぶ機会も得て欲しいと思います。

法文学部・大学院人文社会科学研究科で学ぶすべての学生の皆さんが、充実したキャンパスライフを送ることができるよう心から願っています。